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2021/10/31 09:00

★竣工情報_大宮浅間町ビル

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風情、風合い、風格

大宮氷川神社の参道は約2㎞あり、日本一長い参道と言われる。けやきを中心とした樹木が約700本、壮大な並木空間を構成し、大宮駅至近とは思えない静けさと清々しさに包まれた緑豊かな参道沿いにその建築はある。

オーナーは、この地で長年にわたり釜めし店を営んでおり、全国からファンが訪れるほどの人気店であった。今回、2階建ての釜めし店を建替え、1階にオーナーの飲食店、2・3階にテナントが入る新たな商業ビルとして生まれ変わった。

設計にあたり、この稀有な敷地のポテンシャルを最大限に引き出すため、三つのイメージ―風格・風情・風合いの実現を目指した。 

 

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風格-

参道は特別な空間だ。目には見えない大きな力によって守られているその神聖な領域に対し、建築は一歩下がって控えめに、そして風格を持った存在であるべきだと考えた。十分な引きを持たせて連続する植栽を配したアプローチは、店舗への期待感と、参道への敬意の表現とを両立している。

この形態に至るまでに、建物の”顔”を参道に向けて良いか否か、氷川神社との協議を重ねた背景がある。最終的に、参道に対し開きすぎず閉じすぎない佇まいが評価され、参道沿いの店舗の良きモデルとして許可を得た。結果、この建物の外観を特徴づけている2~R階のコンクリート庇は、参道交差点に近い建築コーナー部を意識したL型サッシと呼応し、商業ビルとしての視認性を高めると共に、けやき並木に手を差し伸べるテラスとしても機能している。

 

風情

この建築には、自然の経年変化や個性が際立つ”面白いモノ“と、整った形態で精度を極めた”端正なモノ”が対比的に配されている。

例えば1階のオーナー店舗には、木目下がり天井の直線ラインと、岐阜の職人による整形なセラミックタイルのカウンターが空間に緊張感を与える一方で、近傍の製材屋で見つけたややクセのあるモンキーポット板を活かした造作テーブルが並ぶ。入口付近の目隠しは、自然な曲がりを持った木の姿をそのまま象った突板柱であり、節に紅色を入れたのはオーナーのアイディアだ。

オーナーが客と対話するその背面の小さな庭には、寄り繰りの植栽だけでなく、オーナーがいつかどこかで出会った瓦や灯籠、石が息づいている。

 

風合い

外装材の選定においては、並木の木漏れ日の陰影と普遍性を表現するため、クラシックなスクラッチタイル4色を11.53.54の割合でランダムにミックスした。

 コンクリート庇の荒々しさもそのままに、低層部の石積みには自然の風合いを残すようにしている。1階の製作スチールサッシ、ムラのある赤錆風塗装鉄板が、新築でありながら、ずっと前からこの地にあったような風合いを醸し出している。

 

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